レートリル
レートリルとは、アミグダリンとも呼ばれ、青酸配糖体の一種です。
レートリル(アミグダリン)の過剰摂取は、健康障害を招く危険性があり、米国食品医薬品局は、米国内でのレートリル(アミグダリン)の販売を禁じています。
また、「レートリル(laetrile)、アミグダリン(amygdalin)」は、過去に「ビタミンB17」とも呼ばれていましたが、
レートリル(アミグダリン)は、ビタミンの定義には該当しないため、「ビタミンB17」の説は否定されています。
レートリル(アミグダリン)は、生体の代謝に必須な栄養素ではなく、また欠乏症も報告されていません。
レートリル(アミグダリン)は、アンズ、ウメ、モモ、スモモ、アーモンド、ビワなどの、
バラ科サクラ属植物の未熟果実の種子にある「仁(じん)」に多く含まれる青酸配糖体です。
青酸配糖体は、微量ですが未熟な果実の果肉や葉、樹皮にも含まれています。
レートリル(アミグダリン)は、果実の「仁(じん)」に存在する「エムルシン」という酵素や、
動物の腸内細菌の「β−グルコシダーゼ」という酵素によって分解され、「シアン化水素(青酸)」を発生します。
「シアン化水素(青酸)」は、非常に強い毒物で、細胞のミトコンドリアに存在する、「チトクロムCオキシダーゼ」という酵素に結合し、細胞の呼吸を阻害します。
レートリル(アミグダリン)の多量摂取による有害作用としては、悪心、嘔吐、頭痛、目まい、血中酸素の低下による皮膚の青白、
肝障害、眼瞼下垂、神経障害による歩行困難、発熱、意識混濁、昏睡、死亡などが知られています。
レートリル(アミグダリン)は、果実が成熟すると、酵素のエムルシンにより分解されて糖に変わるため、果肉中の青酸配糖体は消失していきます。
アーモンドには、甘味種と苦味種の二種類があり、食用である甘味種はレートリル(アミグダリン)を含みません。
また、梅干し、梅酒、梅漬けなどの加工は、レートリル(アミグダリン)の分解を促進すると言われ、
それらの加工品では、レートリル(アミグダリン)の影響は非常に僅かであると考えられます。
一方、「仁(じん)」のレートリル(アミグダリン)は、果肉に比べて高濃度で、成熟や加工による分解も果肉より時間がかかります。
アンズやモモの「仁(じん)」は、生薬の材料(杏仁、桃仁)でもあり、
レートリル(アミグダリン)を薬効成分として、経口で去痰・鎮咳などの用途に利用されています。
この、レートリル(アミグダリン)を、正常な皮膚に塗布すると、局所麻酔(かゆみを止めるなど)の作用があります。
青酸は、ごく少量であればミトコンドリアの酵素(ロダナーゼ)の作用により、毒性が弱く排泄されやすい形に変換されます。
これは、毒も少量を上手に用いれば、薬に転じる典型的な例です。
ただし、この様な利用は、必ず医療従事者の監督の元に利用する必要があります。
レートリル(アミグダリン)の抗ガン作用については、米国の生化学者が、ビターアーモンドの「仁(じん)」から抽出した、 レートリル(アミグダリン)が、ガンの増殖を抑制するとの説を唱えたことから、米国やメキシコを中心に、ガンの治療に用いられた時期がありました。 しかし、米国国立ガン研究所(NCI)は、レートリル(アミグダリン)の効果を検証した臨床研究に基づき、 「レートリル(アミグダリン)はガンの治療、改善および安定化、関連症状の改善や延命に対し、いずれも効果がなく、 むしろ青酸中毒をおこす危険性がある。」という結論を出しています。
レートリル(アミグダリン)について、俗に「レートリル(アミグダリン)はビタミンの一つ。」、
「レートリル(アミグダリン)の欠乏がガンや生活習慣病の原因となる。」、
「レートリル(アミグダリン)はガン細胞だけを攻撃する。」などとうたった健康食品が存在していますが、
レートリル(アミグダリン)の有効性の科学的根拠は、確認できていない、あるいは否定されています。
レートリル(アミグダリン)は、日常摂取しているウメ加工品の「仁(じん)」にも微量ながら含まれていますが、
食品として常識的な量を摂取する場合には、危険性はそれほどないと考えられています。
しかし、特別な効果を期待して、レートリル(アミグダリン)を過剰に摂取することは、
期待した効果が得られないばかりか、思わぬ健康障害を招く危険性をはらんでいます。
レートリル(アミグダリン)を多量摂取したヒトで、健康障害を起こした例が報告されています。
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