葉酸
葉酸とは、ほうれん草の抽出物から発見された水溶性のビタミンＢ２の複合体です。
葉酸（folic acid）は、化学物質名を「プテロイルグルタミン酸」といい、過去に発見されていた、
ビタミンＭ、ビタミンＵ因子、ビタミンＢｃなども、葉酸、又は葉酸含有物であり、
食材中の葉酸の構造が「プテロイルグルタミン酸」であること等が明らかにされています。
葉酸は葉酸活性を持つ誘導体の総称で、生体内や食品中では多様な形態で存在しています。
食材中の「葉酸（プテロイルグルタミン酸）」は、ほとんどがその構造に複数のグルタミン酸が結合した「葉酸（ポリグルタミン酸型）」ですが、
サプリメントなどに添加されている葉酸は、グルタミン酸が１つ結合した「葉酸（モノグルタミン酸型）」です。
「葉酸（ポリグルタミン酸型）」は、タンパク質や糖と結合しています。
「葉酸（ポリグルタミン酸型）」が体内に吸収されるためには、
消化管で「葉酸（モノグルタミン酸型）」にまで、分解されなければなりません。
その為、通常の食材に含まれている「葉酸（ポリグルタミン酸型）」の吸収性は低く、
「葉酸（プテロイルグルタミン酸）」の吸収率に対して、
食材から摂取する「葉酸（ポリグルタミン酸型）」の吸収率は、約半分と見積もられています。
「葉酸（ポリグルタミン酸型）」は、プロテアーゼやアミラーゼによって、タンパク質や糖が分解され遊離します。
遊離した「葉酸（ポリグルタミン酸型）」は、小腸の粘膜にある酵素で「葉酸（モノグルタミン酸型）」に分解、吸収され、主に肝臓に蓄積されます。
生体内で葉酸は、ビタミンＢ１２と共に補酵素として働き、新陳代謝や成長促進に関わる為、
成長期の子供や妊婦の様に、細胞分裂が盛んな時期には、特に必要とされる栄養素です。
また、葉酸は遺伝子情報をのせたＤＮＡやＲＮＡを構成する、核酸の成分合成にも関与しています。
葉酸は、レバー、牛乳、卵黄、酵母、豆類、ホウレン草などの緑黄色野菜、サツマイモ、クルミなどに多く含まれ、
通常の食生活で不足することはありませんが、食事からの摂取が不足した時や、腸からの吸収不良時に欠乏症が起こることがあります。
また、葉酸は、抗がん剤・免疫抑制剤・非経口栄養剤投与時、血液透析などの際にも、欠乏症が起こることがあります。
葉酸は胎児の発育に不可欠な栄養素であり、特に妊娠中や授乳期の女性の血清中の葉酸は、
優先的に胎盤や胎児へ運ばれるなど必要量が増大するため、葉酸の欠乏が起こりやすいことから、それを補うことが重要となります。
最も深刻な葉酸の欠乏症としては、妊娠初期時に葉酸が不足すると、胎児の脳神経の形成異常や、
神経管閉鎖障害の発生率が高くなると報告されています。
また、授乳期に葉酸が不足すると、赤ちゃんに対して、遺伝子形成に必要な栄養素が行きわたらないことから、
発育不全を引き起こすリスクが大きく高まる事が明らかになっています。
葉酸はホモシステインからメチオニンを生成するのに必要で、不足するとホモシステインが血中に蓄積し、動脈硬化の危険因子となります。
ホモシステインは、必須アミノ酸のメチオニンの体内代謝過程での不完全な代謝や平衡状態（バランス）の乱れから作られます。
また、葉酸はビタミンＢ１２と共に造血機能にかかわっている為、葉酸が不足すると造血機能が異常を来たし、
巨赤芽球性貧血（悪性貧血。赤血球中に含まれるヘモグロビンが増えて赤芽球が大きくなり、
通常より赤血球の寿命が短くなるために貧血傾向になる。）を引き起こします。
葉酸を過剰に摂取した場合、発熱、蕁麻疹、紅斑、かゆみ、呼吸障害などの葉酸過敏症を起こすことがあります。
また、葉酸の過剰摂取は、ビタミンＢ１２の欠乏症の診断を困難にしたり、亜鉛と複合体を形成して小腸からの亜鉛の吸収を抑制する可能性があるため、
食事摂取基準でも葉酸の上限摂取量は１日１０００μg（１ｍｇ）としています。
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