ヨウ素
ヨウ素とは、ヨードとも呼ばれるハロゲン元素の1つで、常温で金属光沢を有する固体です。
ヨウ素は、昇華しやすく独特の臭気があり、熱せられると紫色の蒸気を発生します。
ヨウ素は、消毒液やうがい薬などに利用され、生体内ではヨウ素のほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの構成成分として重要な役割を担っています。
ヨウ素は、海水中に多く存在するため、海藻類や魚介類に豊富に含まれています。
日本人は、ヨウ素を多く含む海藻類や魚介類などの海産物を、常食的に摂取してきた食習慣から、
ヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回っているため、ヨウ素不足が問題となることはありません。
ですが、ヨウ素の過剰摂取により健康障害が引き起こされるため、ヨウ素の摂取を目的としたサプリメント類の利用には注意が必要です。
ヨウ素は、食品から色々な形態で摂取されます。
そのうち、ヨウ素イオンは胃と小腸でほぼ完全に吸収され、その他の形態のヨウ素は消化管で還元されて吸収されます。
吸収されたヨウ素のほとんどは甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモン(チロキシンやヨードチロニン)の構成成分として使用されます。
残ったヨウ素の大部分は、腎臓から尿中や糞便中に排出されます。
ヨウ素は、成人の体内で13mg〜15mg程度存在し、ヨウ素のほとんど(約12mg)が甲状腺に存在しています。
甲状腺ホルモンは、タンパク質の合成や酵素反応を中心に、細胞の活動、神経細胞の発達、末梢組織の成長、エネルギー代謝に関係し、発育に不可欠なホルモンです。
ヨウ素の不足は、食品からの摂取不足により起こります。
山岳地帯や内陸部など、土壌のヨウ素含量が少ない地域では不足が起こりやすいミネラルです。
また、キャベツ、キャッサバ、トウモロコシ、タケノコ、サツマイモ、ライ豆、大豆、硬水中のカルシウムイオンなどには、
甲状腺へのヨウ素の蓄積を阻害し、甲状腺腫を起こす成分(ゴイトロゲン)が含まれています。
ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなります。
そのため、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加し、甲状腺の発達を促進することで、ヨウ素不足を補おうとしますが、
この状態が続くと、甲状腺の肥大、甲状腺腫が起こります。
ヨウ素の欠乏による甲状腺ホルモンの生成不足により、精神発達の遅滞、甲状腺機能低下症、クレチン症、
成長発達異常、舌の巨大化、嗄声、動作の緩慢さなどが起こることが知られています。
特にクレチン症は、ヨウ素欠乏に由来する最も重篤な疾患です。
母親のヨウ素欠乏を主な原因とし、著明な精神障害と神経系の障害を伴う成長不全をもたらすものです。
健康な人では、ヨウ素の摂取量が多少増えても、排泄により調節することが出来ますが、長期間の過剰摂取により、過剰症が起こることがあります。
ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こります。
この他、体重減少、頻脈、筋力低下、皮膚熱感などの症状が見られることもあります。
食事摂取基準では、日本人の食生活の現状に合わせたヨウ素の上限量を算定しています。
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